Anime Quester

アニメについての発信(ビジネス・モデル多め)と、映画の感想。ご連絡は tackman.anime(あっとまーく)gmail.com にてお待ちしてます。

たまたま出会った人たちの話とたまたま拾った情報からアニメ業界のことを雑に考える

■何かと話題になる「製作委員会」という単語

製作委員会という単語は、『シン・ゴジラ』が面白かったことの理由にされたことや、最近では「ヤオヨロズ」福原さんの発言、「ポプテピピックの斬新さはキングレコード1社出資が大きかったのではないか」説あったりで、コンテンツ好きの方たちの間では比較的、知名度が高い言葉かと思います。

そして、しばしば「諸悪の根源」にされます。

 

■「1本当り収益は減っているのに制作本数が増える」理由

さて(どんな「さて」だw)、この15年間の A「アニメ市場規模(-アニメ映画市場規模)」を、B「TVアニメ分数」で割ってみたグラフが下記になります。ちなみに数字の出典は、産業統計の調査・発表 | 日本動画協会です。

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初めから断っておくと、超いい加減なグラフです。
B「TVアニメ分数」で割るということで、一応Aはアニメ映画興行収入を引いている数字になるのですが、肝心のアニメ市場規模自体にアニメ映画のパッケージや商品、配信などの売上が入っているので、興行収入引いたところで大した補正になっていません。

ですが、グラフや、また経済産業省からの真面目な調査結果(下請けアニメ制作会社の平均単価が落ちているというお話)をあわせますに、制作本数自体が増えた結果、市場規模全体は大きくなっているように見えるけれど、作品1つ1つの稼ぐ力は減っている、というのがこの15年なんだと思います(利益率も無視なので、目安程度な数字ではあります……)

(参考)アニメ制作は多作傾向、制作企業としては権利確保が課題;情報通信業基本調査が明らかにする、アニメ会社の実像とビジネス|その他の研究・分析レポート|経済産業省

なぜ、アニメの制作本数が増えたのかという理由は、製作委員会方式における出資側のインセンティブが「いかにリスクヘッジしつつ儲けるか」、つまり分散投資による旨味だから。1つ1つの作品の精度を気にするよりは、薄く広く投資する方へ流れていくのは当然で、必然的に投資対象となるPJ数は増えるというのが、色々な方のお話を総合して私が考えるところです。また、アニメプロパーではないことが多い出資者にもわかりやすい(出資してもらいやすい)よう、
「○○部売れた原作のアニメ化です」
「○○枚パッケージが売れた/イベントに○○人動員したアニメの続編(あるいは類似テーマを扱った作品)です」
twitterフォロワーが○○人いる声優さんが主演です」
といったタイプのPJが増えるのでしょう。
(某アニメーターさんに半ば冗談として言われた、市場感覚が薄いうえに合理的ではないオジサンたちが決裁権を握っている状態の危うさは、家電における「ダサピンク現象」と同様との指摘に、膝を打ちました。)

 

■日本には”大日本制作会社” と ”ジブリ" しかない ?

2017年4月1日号の週刊東洋経済(アニメ特集号)には、業界人のコメントとして「日本には2つのアニメ会社しかない。大日本アニメ制作会社とジブリだ」という、煽り気味な言葉が掲載されております。

ここで言う“大日本アニメ制作会社”とは、出版業界(≒原作漫画)が開発した企画を、製作委員会方式を使って調達した資金をもとに、声優業界(≒個別の声優さん達の人気)によって宣伝してもらいつつTVアニメ(と派生する劇場版やODS)として世に出す仕組みのことだと思います。

対して“ジブリ”とは、そこの仕組みとは違った形で劇場版やOVA、あるいはショートアニメ単品を作るスタジオや監督さんのことでしょう。クリエイターのお名前を挙げれば、古くは押井守片渕須直湯浅政明細田守新海誠原恵一、変わったところで原田浩。スタジオでいえばポリゴンピクチュアズ、スタジオコロリド、ツインエンジンといった劇場作品を発表する会社から、ポイント・ピクチャーズ(ゲーム業界からの仕事中心)、クラフター(CMへ特化)といったテレビから離れた仕事に特化する会社もあったり。(意外に沢山ありましたね……)

 

■「アニメはブラック業界」は変わるのか。

「アニメ産業はブラックだ」とは、しばし話題になることですが、どちらかというと前者("大日本アニメ制作会社”)に所属する方たちの状況を指しているのでしょう。
PJ数を増やしつつ総出資額は押さえたいという製作委員会のインセンティブ上、単価は上がらないまま仕事だけが増えるという状況は、現状維持~若干後退はありこそすれ、基本的には止まらない流れだと思います。アニメスタジオが、製作委員会方式の中で得をする方法は、配信や商品化といった儲かりどころの窓口を抑えるか、著作権を持つことですが、ノウハウだったり出資資金だったりオリジナル企画を乱発できるヒットメイカーがいないとダメで、それはそれで難しいと思います。垂直統合化(自前で企画開発)するべく「京アニ大賞」をもとに「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を作った京都アニメーションが1歩先んじましたが、まだ時間のかかる道のりかなとも。

長い目で見れば、製作委員会方式を使ったとしても「ヒットの精度をあげ、かつきちんとした報酬でクリエイターを集めるPJ」を増やすことでダメPJを淘汰していくという流れが、現実的なのではないでしょうか。

アニメ業界は小さいので、そのうち狂った製作プロデューサーが出てきて業界体制を塗り替える、ということも可能だと思います。
製作委員会方式だって、30年くらい前に、徳間書店東京ムービーキングレコードあたりのどなたかが、必要に応じて作った新しい仕組みだったのですし……。)

 

以上、およそ「研究」タグから遠いうえ、new topicのない雑文で恥ずかしいですが、個人的な考えを整理させていただきました。
これまでも10人くらい、突撃アポをしてお会いする時間を頂いたのですが、引き続き色々な方にお話を伺い、見識を深めていければと思います。(あと、「配信」と「中国」というテーマについては、他日記事を書きます。)

 

【補足1】

ヤオヨロズ福原さんによる、色々なファイナンスの違いから飲み会のマナーまで解説した、実践的過ぎる奇書です。パッションにあふれています。

 

【補足2】

余計にアニメーターにお金が行かなくて、不思議だよね。普通仕事があるところって、給料が上がるじゃん。なんでアニメ界って、こんなに仕事があって、現場がいっぱいいっぱいなのに……。普通そういうところだったら、中途半端な腕を持っている人間が山のように入ってきて、アニメ界のアニメーターが何倍も増えて、一大産業として成立するはずなのに、なんでこの正のフィードバックが起こらないの?

☆「単価が低い」「業界のことを考えずに、独立してPJを立ち上げ中抜きする人が~」といった問題に触れつつ、「アニメ業界全体は一回畳んだ方がいい」というぶん投げ結論に行き着くのが読んでて正直残念でしたが、岡田斗司夫山本寛コンビに言われると言葉が重いです。

 

【補足3】

☆いきなり視点が大上段になりますが……、「エンタメ=生きることに必要ではないが、あった方が人生が豊かになる」と捉えると外食産業(サイゼリヤとかラーメン店とかコンビニのデザートとか)、疑似恋愛商売と見ればAKBやSHOWROOMあたりが、ヒントになるかもしれません。