Anime Quester

アニメについての発信(ビジネス・モデル多め)と、映画の感想。ご連絡は tackman.anime(あっとまーく)gmail.com にてお待ちしてます。

現役20年のアニメーターが斬る!(前編) コンプラ無きアニメーターの世界 ~たとえば恋愛事情について~

 アニメーターの皆さんは、日頃どのように働いているのでしょうか。例えば、作品解説という形でのインタビューや、業界団体によるレポートによって、間接的には知ることができます。さらに、最近ではSNS上で発信しているアニメーターも少なくありません。
 そこで、もっと踏み込んだ事情を知るべく、業界歴20年、某有名作品にも関わっていらっしゃるフリーのアニメーターさんに、「恋愛」「賃金」というsensitiveなテーマに焦点を当てつつ、インタビューを行いました。まずは第1弾をお届けします。アニメーターって、どんな恋愛をしていますか?

※以下凡例:アニメーターさん「A」、タックマン「タ」

 

■「子どもがいるのは二十人に一人位」

タ:アニメーターで、結婚している人、どれくらいいますか?
A:めちゃくちゃ少ないです。しかも結婚している人は、ほぼ例外なく作画監督以上の役職です。キャラデザはもとより、作画監督位にならないと何をするにも余裕がありませんからね。制作サイドではデスクかプロデューサー。業界全体では、既婚者は2割を切っているんじゃないでしょうか。

タ:収入の問題ですか?
A:言ってしまえばそうです。女性に限って言えば、業界外の方と結婚するパターンが、たまにあります。ちゃんと所得のある旦那が別にいれば、極端な話、道楽でも仕事ができるので。
タ:そうなんですね。
A:今までアニメ業界で、20代中盤から50代位の方々を200人以上見てきましたけど、子どもがいる人はごく少数かな。さらに言えば7割くらいは、付き合っている人がいないのでは?単純に、朝から晩まで仕事があるので、恋愛どころじゃないです。
タ:確かに、「忙しそう」というイメージが強いです。
A:特に、最初の新人時代はそうですね。仕事の単価が安いので、実家暮らしをしていたり、親から仕送りをもらっていたりしていない人については、生活を成り立たせるためのノルマをこなすだけで疲弊していきます。もともと、リア充じゃない人間の集まりだということもありますが(笑)。

f:id:ladyrossa76:20180415164613j:plain

 

■「30代後半~40代ベテランアニメーター」と「新人女性アニメーター」

A:あるとすると、ストーカー含め「年の差」の恋愛になることが多いです。よくあるのが、30代後半から40代のベテランの域に入りつつある作画監督の男性と、入って数年の新人作画の若い女の子が付き合ったり結婚したり、というパターンですね。僕の周りでも何例かあります。
タ:へー! もっと絵がうまくなりたい女の子と、憧れのアニメーターってことで、一見需要があっていそうな感じがしますね。
A:そうなんですよ。始めは師弟関係だったのが、結果的にそうなっていくというパターンです。新人教育を任された流れで……とか、極端な話になると、可愛い女の子が入ってくると男は浮足立つので(笑)、会社で号令がかからなくても自主的に教えていくうちに……的な。新人の女の子は女の子で、業界入りたてで右も左もわからないなか助けてもらううちに好きになって……ということですね。もっと言うと、手を出す男は、かたっぱしから手を出していきます。
タ:そんな人いるんですか?!
A:30代でキャラデザまで言った人は、言い方アレですけど、自分から積極的に行けば手を出し放題です。
タ:それはプレイボーイって意味ですか。それとも、痴漢的な意味でちょっかい出しちゃうってことですか?
A:一般的な「プレイボーイ」像からすると勿論レベルは低いですが、意味としては前者です。30代で、ある程度成功しているクリエイターって、自信家で自意識が強いナルシストが多い。そういう人って、女性に対してグイグイいくじゃないですか。
タ:なるほど。
A:また、アニメ業界に入ってきた女性の側でも、恋愛経験が少ない人が多かったり、「人生賭けて入ってきた絵の世界で、追い付けないほど眩しい先輩から言葉をかけられたり評価されたりするるとコロっていっちゃう」という印象ですね。
タ:アニメ―ターになりたい人って、コミュニケーションが得意じゃない人がそんなに多いんですか? 今、特に若い人のなかで、アニメ好きの裾野は広がっているじゃないですか。
A:結局、絵を仕事にできるような人って、絵しか描いてきてないことが多いんですよ。わかりやすく例えれば、東大生と一緒です。「貴重な青春時代に受験勉強しかしてこなかったから、いざ学生生活が始まると、本来なら出来なきゃいけないことが何もできない」っていう。他人と普通にコミュニケーションを取れることをはじめ組織に所属して働ける人は、どちらかというと、ゲーム会社のような組織に就職する道を選びます。
 また、アニメーターに仕事の営業をかける制作進行の子たちの中でも、男性アニメーターには若くて可愛い子を、女性アニメーターにはイケメンの男性をあてがうと仕事を取ってもらいやすいとは皆が言いますね。
 アニメーターへの営業が上手い制作進行の中には、デート商法的なやり方で仕事をさばく人もいます。容姿が良く恋愛に長けた人であれば、恋愛経験が乏しく身近にめぼしい異性もいないアニメーター達はちょろい相手だと思いますよ。

f:id:ladyrossa76:20180415164645j:plain

 

■スタジオをクラッシュするメンヘラ女子も

A:アニメーターとして業界にやってくる女の子も女の子で、俗に言うメンヘラっぽい子がいたり。サークルクラッシャーみたいに色んなスタジオ内の男性を乗り換えて大事件になる、という珍事もあります。
タ:そうなんですか!
A:僕が前いたスタジオだと、作画監督と付き合うようになった新人の女の子がいたんですね。彼女が、仕事でうまくいかない時にシクシク~って泣いて。仕方ないから、他の先輩が慰めたんです。そしたら「この人も好きかも!」ってなっちゃって、その先輩とも関係が出来始め……。作画監督やっているおっさんがブチ切れ、先輩の胸ぐら掴んでいるのを見たことがあります。
タ:それは、少人数のスタジオですか? それとも、大手……?
A:まぁまぁ大きいところではあります。

 

■「小学生みたいなマインドでの恋愛」

A:経験が無いのに自意識が高い人って、何に対しても「自分はやればできる」と思っているんですね。オタクの恋愛下手の根源にも共通しますが、「2次元に嫁がいる」というのは方便で、どこかで「俺は本当はモテるハズだ!」と思っているような人が、クリエイターには多いんです。そういう人たちが、恋愛経験なく30、40歳になって、たまたま立場上みんなからチヤホヤされると、割と調子に乗りがちで。
タ:うわー。
A:アニメの現場では、40歳、下手したら50歳のオジサンが、小学生みたいなマインドで恋愛してるんですよ。
タ:小学生みたいって、どういうことですか?
A:どういえば言いのかな……。例えば、「デート行こうか」と言って、公園のベンチに座るだけとか、アニメ映画見に行って帰りはマックで食事みたいな……。
タ:40代50代ですよね?
A:「彼女の誕生日に、何あげていいかわからない!」って迷った挙句、5000円のAmazonギフトカードあげたりとか……。
タ:なんというか、本人たちが幸せなら別にいいですが……。
A:良くも悪くも普通のアニメーターは、会社にしか出会いがないので……。なんでしょう、恋愛における駆け引きが小学生の段階のままの大人たち。その中で、やれ二股だとか浮気だとか出ると、感情の爆発も小学生並みでしかなく、仕事への支障の出方が、大変なんです。どの業種でもある事ですが、アニメの現場では更にめんどうな事になり易いですから……。仕事外で出会いがある人は職場恋愛には危機感を持って避けてたりしますね。
タ:もはやリスクヘッジ感覚で、恋愛注意!ってことなんですね。
A:1番多いのは、当事者間でトラブルがあった時、社内で顔を合わさないようになるパターンです。これが、同じ作品に関わるチーム内のカップルになると、「どっちかが会社にいる時はどっちかが会社に来ない」となって、周りが迷惑します。場合によっては、席替えをやりますね。
タ:席替え?!
A:やりました。席替え、やりました!(笑)
タ:小学生じゃないんだから!
A:でもアニメータは寝ても覚めても会社の机で仕事している事が多いので、下手すると普通の人が同居するよりも長い時間を同じ仕事場で過ごす事になるんです。仲がいいうちは席が隣でも良いでしょうが、関係がギクシャクすると向こう何席にもわたって二人の嫌な空気が漂って来るので被害は甚大です……。
タ:そうなってしまった状況では確かに、席替えは有効かもしれませんね……。

f:id:ladyrossa76:20180415164722j:plain

 

■行き過ぎた恋愛は、軽犯罪直前に

タ:ここまでは、私のような蚊帳の外の人間にとっては珍事件的なエピソードをご紹介いただきました。中には、何かネガティブな問題に発展する事件もあるのでしょうか。
A:残念ながら、ネガティブな事件は表には出てきません。僕自身も、自分が立ち会ったものしか知りません。
タ:以前お伺いした、明らかな犯罪行為をした某事件(※)が、印象に残っています。
A:業界内では、有名な事件ですからね……。
タ:あれは結局、社長からクビにしたんでしたっけ?
A:クビにはしてないです。なぜから、アニメーターは最初からフリー、雇っていませんから。「悪いけど明日から机を片付けてくれ」と、言い渡した感じですね。
タ:そっか、そもそも社員じゃない。「責任取ってくれ」って言ったって、責任の負いどころが曖昧なんですね。
A:もっと下世話な話であれば、「現場を統括している人の趣向で可愛い女性ばかりが採用される」という会社、あります。つまりハーレムを作ってしまったんです。その首謀者はかなり手癖が悪いという噂があり、実際に被害に遭った女性も知っています。しかも、その手癖が悪いヤツは、なんと既婚者!
タ:は~!
A:欲望にこのくらい正直で、このくらい向こう見ずだからこそアニメ業界でも臆せず影響力を持てるポジションにいるんだと思いますよ……。

※事件内容の詳細を書くと個人が特定されてしまうために伏せていますが、ベテランアニメーターによる「明らかな犯罪行為」があったそうです。

 

■守ってもらえないアニメーターたち

タ:お話を伺っていると、女性が泣き寝入りしてしたというパターン、多いのでは?
A:そうですね。アニメの現場では、男女いた時は女性の方が「クリエイターとしてキャリアが浅い」場合が多く、現場でどうしようもないトラブルになった場合はより貢献度の低い若い女性スタッフが切られる事が多いです。
タ:色々なトラブルがあった時、誰に訴えることが多いんですか?
A:一番多いのは、仲の良い同僚に話すかその相手もいなければTwitterで愚痴る。
タ:まぢですか。
A:基本的に、社長とかプロデューサークラスの制作陣は、現場1人1人のコンディション管理にまで携わりませんから。先ほどの「明らかに犯罪行為をした某事件」でも、毎年新人の子が数人で社長に掛け合いながら、実際に事件が起きるまで、一切取り合われませんでした。唯一発散できるとすれば、同期に言うとか。
タ:制作プロデューサーや社長に直談判するという手段は、一般的でないんですか? 普通の会社だったら、人事部に言うなり何なり、コンプライアンスを訴える窓口が色々あるじゃないですか。
A:むしろそれをやることによって、自分自身が切られる可能性の方が怖い、というのが正直なところです。それに会社からすると、問題のある本人の方が、会社に利益をもたらすので。しかも、もともと雇用契約があるわけではないので、「文句があるのなら辞める」が基本になってしまっています。僕も実は新人の頃、辛い時期に一度、先輩との人間関係で会社の偉い人に直談判したことがありました。相手の先輩はよく分からない先輩後輩ルールを持っていて、それに準じない新人には沢山の嫌がらせをやる方だったんです。僕の同期やその後入ってきた後輩もその先輩との関係に大きなストレスを感じ何人も辞めていきました。さすがに社長に、「有望な新人がその先輩のせいで数多く辞めています。長い目で見た場合、あの先輩を何とかしないとここでは新人が育てられなくなります!」と直訴しました。でもそこで社長に面と向かって返されたのが、「職人の世界は、そういうの含めて引き受けるのが、新人の立場だから」。それ以降、入ってきた後輩達に対し、「この先輩は○○が地雷で、こう振る舞え」とレクチャーするのが、僕の役目でした……。

f:id:ladyrossa76:20180415164918j:plain

(後編へ続きます。)