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『アーリーマン ~ダグと仲間のキックオフ!~』感想:どうしちまったんだよアードマンさん!

クレイアニメなのにアクションが凄い! 小ネタが楽しい! ありがとうアードマン! しかし見た後、何も心に残らない! キャラクターの名前すら、邦題見ないと思い出せない!

ウォレスとグルミット」のニック・パークが、原始時代を舞台に作り上げた奇想天外なストップモーション・アニメーション。ブロンズ・エイジ・シティの暴君ヌース卿によって故郷の谷を追われたダグたちは、人気のスポーツ、サッカーで対抗しようとする……。「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」のエディ・レッドメイン、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」のトム・ヒドルストンら豪華スターが声の出演。 アーリーマン~ダグと仲間のキックオフ!~ | 映画-Movie Walker

アードマン・アニメーションズは、ストップモーションアニメを得意とする、イギリスのアニメ制作会社です。日本では、プッチンプリンのCMに起用された『ウォレスとグルミット』シリーズや、NHKで放送中のアニメ『ひつじのショーン』シリーズで知られています。また、歴代の劇場用長編作品はアカデミー賞長編アニメーション部門で常連という、知る人ぞ知る名門会社でもあります。

そんなアードマンの新作映画『アーリーマン ~ダグと仲間のキックオフ!~』、日本では7月6日公開予定ですが、素敵な機会を経て、一足お先に拝見しました。

肝心のお話は、よそ者に領地を略奪された原始人が、領土奪還を賭けてサッカー勝負をするという、まさかの原始時代スポ根サッカーアニメ映画w 「石器時代の主人公 vs 青銅器時代の敵 によるサッカー対決」という飛び過ぎててよくわからない設定、ストップモーションでこんなに動き回ってよいのか心配になるほどキレッキレのアクション、10秒に1度は挟まれてくる小ネタ&ちょっとヌケてズレている登場キャラクター達のオフビートな掛け合い等々、相変わらずのアードマン印、とても楽しかったです。

……しかし、しかし! ストップモーションアニメの老舗として、上記のおなじみのノリであったり、あるいはストップモーションアニメ上の技術1点突破な作品の作りに、限界を感じてしまったのも確かでした。

一緒に見た人が、「『アーリーマン』には、アードマンアニメを特徴づけるイギリスらしさ(大人向けウィットやイギリス文化的な要素)が無くて好きじゃない」と言っており、思わず反論してしまったのですが、今作は、原始時代が舞台とは言え、映画冒頭時のテロップに「(舞台は)マンチェスターあたり」と堂々と出てきます。さらに、サッカーはイギリス発祥のスポーツに他なりません。つまり、本作もまた、イギリス人によるイギリスをモチーフにした作品です。たとえば、日本人が縄文時代を舞台に楽しい柔道アクション映画を作るのと一緒です。

そのこと自体は、毒でも薬でもありません。しかしながら、娯楽性の追求+技術的革新に加え、より社会的な目線を持ち試行錯誤を行っているディズニーやピクサー。あるいは同じストップモーションアニメでも、児童虐待をテーマにした『僕の名前はズッキーニ』や、「アメリカ人スタッフによる中世日本を舞台にしたアクション」という文化的チャレンジに挑んだ『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』。

アードマンは、あくまで自分たちが興味があるものや好きなモノだけに焦点を当てた、やや過激な言い方をすれば「老舗であることに胡坐をかいた、自己満足のための映画」しか作っていないのでは……という、筋違いな怒り通り越して悔しさ(!)を、つい覚えてしまいました(なんちゅー迷惑なクレーマー!)。例えば、本作のストーリーラインが「少林サッカー」とほぼ同じであったり、アニメ映画につきものの覚えやすい主題歌が無い(あの『ひつじのショーン』映画版『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』にすら、"Feels Like Summer"という名主題歌があったのに!)という点を見るに、今作において、アードマンはいわゆる「新作映画」の面白さは捨て、ストップモーションアニメの技術や、アードマン節のユーモアといった、ガワで勝負をしに来ているのですね。『少林サッカー』と同じならば少林サッカーを見ればいいし、ストップモーションアニメの技術にしても、あくまでハンドメイドに拘るアードマンに対し、アメリカの新勢力・ライカ3Dプリンターを使った圧倒的な表情表現(!)初めとする新技術を駆使することにより、ストップモーションアニメの可能性は日進月歩している昨今です。裏を返せば、アードマンは「自身のストップモーションアニメ技術(&笑いのセンス)はきっとお客さん達を楽しませられるぜ!」という自信を持っているのが伝わった反面、今まで成し遂げてきた偉業をさらに更新していこうとする気概を、残念ながら感じられないというのが、『アーリーマン』を見て思った率直な印象でした。

……以上、生意気に辛口に書いてしまいましたが、残念ながら日本公開時は、その後目白押しな夏休み超大作に押されて恐らく黙殺されそうなため……、劇場で見かけた方は超ラッキーだと思い、ぜひ観て頂きたいです! 折しもW杯で盛り上がっている今、サッカーアニメはいかがっすか、っつって。

そもそも、ストップモーションアニメというのは、1コマ1コマ人間の手で動かしながら撮影していくため、1日あたりに撮影できるのが、わずか6秒分なのだそうです。そんなジャンルに、設立以来40年挑戦しているアードマン。日本のアニメ会社に例えるならば、さしずめ、平成もそろそろ終わる時期にあって、未だセルを使って毎週サザエさんを送り出しているエイケンさんに近い、偉大なスタジオであることは確かです。

▲映画『ひつじのショーン ~バック・トゥ・ザ・ホーム~』(2015)主題歌。開始1分はじめ劇中印象的な場面で流れる歌です。特に開始1分の映像に、思わず涙腺やられました。一部映画ファンからは「ひつじ版マッドマックス」と奇作扱いされてることはじめ、見応えある一作です。

かつて、ニック・パーク監督は、『チキン・ラン』(2000)にて「雌鶏が、自らを搾取する牧場主から、いかに逃げて自由を得るか」という、何かの人権メタファーなのか?!と思わせる物語を生み出した末に、『ひつじのショーン』で「自分が家畜であることはさておき楽しい牧場生活を送ろうよ」的トーンに変わった結果シリーズが10年以上続く過去がございました。「よよ、ショーン大好きだけど、監督の切れ味ニブってきてませんか………?」と忸怩たるものを感じたことを、いよいよアーリマンで思いました。 ウォレグルは遠くなりにけり。