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感想『パンク侍、斬られて候』:湯浅監督版のアニメで見たい

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昼間、マックでフィレオフィッシュセットを食べたことをすっかり忘れ、ルンルン気分の夕方バルトナインでフィッシュアンドチップスを頼んでしまい、着席してから「あ、これ昼とほぼ一緒の食べ物じゃん……」とテンション下がりまくりの折、見て参りました。

芥川賞作家・町田康が2004年に発表した異色時代小説を、「新宿スワン」の綾野剛主演、「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」の宮藤官九郎による脚本、「狂い咲きサンダーロード」の石井岳龍監督のメガホンで映画化。江戸時代を舞台に、隠密ミッションをめぐって繰り広げられる10人の男たちの腹の探り合いと、1人の女をめぐる恋の行方、そして謎の猿将軍が明かす驚がくの真実を描き出す。超人的剣客にして適当なプータロー侍の主人公・掛十之進を綾野が演じ、喜怒哀楽と活劇が入り交じる難役に挑む。共演にも北川景子東出昌大染谷将太浅野忠信永瀬正敏ら豪華実力派俳優陣が集結。さらに物語の鍵を握る猿将軍・大臼延珍(デウスノブウズ)を、永瀬正敏が特殊メイクで演じる。 パンク侍、斬られて候 : 作品情報 - 映画.com

町田康作品は、ずいぶん前に偶然、『夫婦茶碗』(1997年)だけ、読んだことがあった。立て板に水のごときナンセンスな文体と、そんな文体に一致していくかのように次第に現実と虚構が入り混じっていく展開の果てに、照れ隠しのように込められた主人公のピュアで悲痛な願いがキラっと光っていたことが、印象に残っていた。本棚の奥から引っ張り出してきたところ、改めてラストにグッときた。 

ここまでやっているのだから、ここまでやっているのだから、きっと、きっと、必ずや、大丈夫に違いない、と、わたしは、思いたい、と、まず、大きい方の蓋を取って、茶を入れた。ダメだった。入れた茶を捨てて茶をもう一度やった。駄目だった。ちっとも茶柱が立たぬのである。しかし、わたしは負けない。きっと、きっと、必ずや、この二つの茶碗、夫婦茶碗に二つながら茶柱を立てて見せる。わたしは負けない。茶柱。頼むよ。立ってね。茶柱
わたしは夫婦茶碗茶柱を立てる。
立ててこます。       (『夫婦茶碗』)

主人公の男が、いなくなった(?)奥さんを想う気持ちが「1人きりの家で、夫婦茶碗茶柱を立てる!」という行動にしか繋がらないアホさと、それでも真剣に茶柱を立てるようとする男の必死さが切なくておかしくて、「こんな文章、及び展開で終わる小説、あってたまるか!」と、なかなか忘れがたかった。何かをキメてるとしか思えない、素晴らしい小説です。

翻って本作『パンク侍、斬られて候』、原作を読んでないのですが映画を見た限りでは、現代スラングを喋る江戸時代人、加えて登場人物は全員アホ、インチキ宗教、喋るサル...etcと、町山原作で読んだら絶対に楽しいに間違いないでしょう。しかし、例えクドカン脚本の力を借りたとしても……実写で見ると、どこか空々しさを覚えてしまったのでした。

途中までは、「これは、登場人物たちが現代語喋るしアホとはいえ、時代劇の舞台を借りて何かを語ろうとしている群像劇なのね」と、先が読めない展開に手に汗を握りました。しかし、あるキャラクターが登場してからは、それまでの物語世界が保っていたリアリティラインが崩れた挙句、後は怒涛のCG合戦。CG技術が低いというわけではなく、虚と実ギリギリで成立していた洒落の世界が、一気に作り物になってしまったことに興醒めする(≒興味を失っていく)うちに、意外や意外、きっちり伏線を回収して映画は終幕します。結局、全部作り物だったんかーい。
ネットで感想を2、3見たら、インチキ宗教に我を忘れて熱狂する平民たちの描写に対し「まるでワールドカップに熱狂する渋谷だ!」といった批判性を指摘する意見もありましたが、ワールドカップへの熱狂(祭りだワッショイ!)に比べ、平民たちがインチキ宗教に感じてしまった救いの質は、ちょっと違うような気もして。

やはり実写では、前半と後半で、物語の内容も進むスピードもガラリと変わってしまったことが「アレ、何か作品変わってない?」という違和感になってしまうので、ここは1つ、湯浅監督版のアニメ化で見たかったということで。特徴的な文体原作&特徴的な踊りが出てくることもあり、『夜は短し~』的カオスになったに相違いないで候。

 

クドカン作品という視点だと、個人的には前作『TOO YOUNG TO DIE』の方が好きでした。

 

しかし、全ては暑さにやられて一日に2度も白身魚フライを食べてしまったせいです。綾野剛は悪くない。